裏切りにどう向き合うか
2026/03/08
昨日、南座で観た
「曽根崎心中物語」のお話から。
あらすじは下記のとおり。
曽根崎心中・あらすじ![]()
大阪天満屋の遊女お初と醤油商平野屋の手代の徳兵衛は
将来を誓い合う恋人同士。
ところが、平野屋の主人で徳兵衛の叔父が
姪との縁談を進め、徳兵衛に何も言わず、
結納金を継母に渡してしまったのです。
徳兵衛は、その縁談を断り、
継母から金を取り返すします。
そこへ、友人の九平次がその金を貸してほしいと
徳兵衛に泣きつきます。
徳兵衛は善意で金を貸したのに、
九平次は期限になっても金を返さないばかりか、
「徳兵衛に金など借りていない、騙し取ろうと嘘をついている」
と言いふらし、大勢の前で徳兵衛に暴力を振るいます。
大坂の商人にとって信用は命。
信用を失っては生きてはいけないと、
徳兵衛は生きる術を見失います。
傷だらけになった徳兵衛が天満屋を訪ねると、
お初は縁の下に徳兵衛を匿います。
そこへ九平次がやってきて徳兵衛の悪口を並べたてます。
お初は怒りに震える徳兵衛を足で押さえ
「死ぬる覚悟が聞きたい」
と言います。
徳兵衛はお初の足を取り、
喉元に当てて自害の決意を伝えます。
二人は、真夜中に天満屋を抜け出し、
曽根崎の天神の森へ向ったのです。
物語の中で、
徳兵衛は友人・九平次に裏切られます。
信じていた人に騙される。
その痛みは、想像以上に深いものです。
以前、文楽で「曽根崎心中」を観たとき、
私は九平次に対して強い怒りを感じました。
人の良い実直な徳兵衛を騙して
その騙したことも正当化、
騙された方が悪いという話にすり替えてしまいます。
どうしてこんな酷いことができるのか。
こんな人がいるのかと。
裏切りは、
人の心を荒らします。
怒りや憤りで、
物語のすべてが塗りつぶされてしまうこともあります。
九平次は悪者
徳兵衛はかわいそう と。
けれど、今回の歌舞伎では、
そこよりも強く残ったものがありました。
それは、お初と徳兵衛の想い。
裏切りがあったからこそ、
二人の想いがより鮮明に
浮かび上がったように感じました。
同じ物語でも、
どこに焦点を当てるかで
印象は変わる。
裏切りを見るのか。
それでも残る想いを見るのか。
人生も、きっと同じです。
私たちは時に、
信じていた人に裏切られることがあります。
その出来事に心を奪われ続けることもできるし、
それでもなお、自分が大切にしたいものに
目を向けることもできる。
裏切りは消せない。
でも、そこに留まり続けるかどうかは
自分で選べるのかもしれません。
物語は、
出来事そのものよりも
どこを見るかで形を変える。
今回の舞台は、
そんなことを教えてくれました。
怒りや憤りを握りしめ続けるのか、
それとも手放すのか。
それもまた、選択なのかもしれません。
九平次の歪んだ性根は
どうしたらあのような人間になるのだろう
という疑問も湧きますが
悪いことをする人はいつの世もいるものです。
人を善悪で判断するよりも、
出来事の背景、
その人の物語に思いを馳せるほうが、
私は好きです。
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