春を感じる
2026/03/01
石走る垂水の上のさわらびの萌えいづる春になりにけるかも
― 志貴皇子
岩を打つ滝のほとりに、蕨が芽吹いた。
ああ、春が来たのだなぁ。
奈良時代の人々は、
自然の変化そのものから季節を感じていました。
蕨の新芽を見て、春を知る。
豊かな感性ですね。
自然の力がその感性を
引き出してくれるのでしょうか。
今の私たちはどうでしょう。
カレンダーが三月になったから春。
桜が咲いたから春。
自然よりも、暦が先に来る。
明治以降、太陽暦が採用され、
時間は均一化されました。
生活は便利になりましたが、
自然のサイクルとは少しずつ距離ができました。
私の鴨川の散歩は、
日の出に合わせています。
冬は遅く、夏は早い。
冬至と夏至では、
日の出の時刻が二時間ほど違います。
それだけで、身体の感覚が変わります。
朝の空気の匂いも、光の角度も違う。
「春」とは、
暖かくなることではなく、
光が変わることなのかもしれません。
保健師として働き始めた頃、
ある医師が言いました。
認知症の始まりは、
時間がわからなくなることだと。
予防するには、
旬のもの、季節を食べるのが良い とも。
もう30年以上前の話です。
それからますます認知症の方が
多くなってきました。
いつでも同じ野菜が並ぶ時代。
季節の境目が曖昧になる時代。
自然と生活が離れていくことは、
身体にも影響するのではないか。
そう思うことがあります。
断捨離は、
モノを減らすことではなく、
環境を整えること。
環境が変われば、
感じ方が変わる。
感じ方が変われば、
生き方も変わる。
三月。
蕨はまだ見ていませんが、
朝の光は確かに柔らいできました。
自然にもう一度、
生活を近づけてみる。
春を感じられる感性を、
手放さないでいたいものです。
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オフィス空(義永直巳)
京都府京都市中京区油屋町89
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