時間をかけて成熟していく技
2026/06/29
先日、文楽の若手公演を観に行きました。
その若手公演で、
以前、文楽鑑賞教室で人形遣いの
説明をしてくださった方が
静御前の主遣いをされていました。
足遣い10年、
左手遣い10年、
ようやく主遣い(顔と右手)。
足だけで10年も…
伝統芸能というのは一人前になるために
相当の時間を必要とするのだと思いました。
入門してから20年以上。
ようやく主遣いをさせていただけるように
なったと話されていたようです。
その話を聞いて、
若いころの自分を
思い出していました。
私も若かりし頃、
先輩の仕事を見ながら
「私にもできる」と思っていました。
でも、最初は簡単な仕事しか
任せてもらえません。
当時はまだお茶汲みみたいな仕事も
していた時代です。
私の後輩が入ってくるまで、
毎日、朝早く出勤して、机を拭き、
お茶を淹れていました。
なかなか後輩が入ってきてくれなかったので
私は4年ほど一番下っ端でした。
私にもできると思っていた仕事も
実際にやってみると
見ていたほど簡単ではないことが
わかりました。
やっていることは同じなのに
相手からの反応が違うのです。
何が違うのか…と
悩んだものです。
それから、
いろんな失敗もしましたし、
その度に、上司に後始末を
してもらうことになりました。
そんな経験をした上で
同じ仕事をすると
見えてくる景色が違いました。
若い頃の私は、調子に乗ってたなと
その時になればわかるのです。
若い頃は、
難しい仕事を任せてもらえることが
一人前だと思っていました。
でも、
本当に難しかったのは、
相手の気持ちを受け止めることでした。
人相手の仕事というのは、
仕事の内容ではなく、
どれだけ相手のことを考えているか、
自分自身が成熟しているかどうかが
問われるもの。
若い時に失敗をしておきなさいと
父からもよく言われましたが、
後からその意味がよくわかりました。
コツコツと日々のお役をつとめてこられた
若手の人形遣いさんは、
熟練の人間国宝の方が遣う人形には
まだまだ程遠いかもしれませんが、
今ある力を精一杯出し切っているところが
素晴らしいと思いました。
一足飛びに成長することは
できないのかもしれません。
でも、
今日のお役を丁寧につとめることが、
明日の自分を育ててくれる。
文楽の若手の方を見ていて、
そんなことを教えられた気がしました。
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オフィス空(義永直巳)
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